韓国のお墓は、日本とは大きく異なる歴史と文化的背景を持っています。かつては儒教の影響から土葬が主流でしたが、現在は火葬・納骨堂・樹木葬へと急速に移行しています。韓国に縁のある方や、海外の葬送文化に関心のある方にとって、その変化の背景を知ることは、供養や文化への理解を深めることにつながります。
この記事では、韓国のお墓の伝統的な形から現代的な変化まで、供養の習慣・葬儀の流れとあわせてわかりやすく解説します。
韓国のお墓事情の基本

日本と大きく違う点
日本では火葬が主流で、骨壷に遺骨を納めて墓石の下に埋葬するスタイルが一般的です。一方、韓国では長らく遺体をそのまま土に埋める土葬が主流でした。また、韓国の伝統的なお墓は山の斜面に設けられることが多く、日本のような墓地に整然と並ぶスタイルとは異なります。
| 項目 | 韓国(伝統) | 日本(一般的) |
|---|---|---|
| 埋葬方法 | 土葬が主流だった | 火葬が主流 |
| 墓の形 | 土饅頭型・山の斜面 | 墓石・霊園・寺院墓地 |
| 管理 | 子孫が維持・管理 | 寺院・霊園が管理 |
| 供養の日 | 秋夕・清明節など | お盆・彼岸など |
伝統的なお墓の形
韓国の伝統的なお墓は、遺体の上に土を盛った円形の土饅頭(どまんじゅう)型が特徴的です。墓の前には石のテーブル(床石)が置かれ、お供えを並べるスペースが設けられていました。周囲には石の欄干や碑石が配置されることもあり、広い土地を必要とする形式です。
土饅頭型の墓が一般的だった背景
土饅頭型の墓は、遺体を傷つけずにそのまま土に還すという考え方から生まれたものです。儒教の「身体髪膚これを父母に受く」という教えが、遺体を損なわない埋葬形式への信仰につながっていました。また、広い土地に墓を設けることは先祖を大切に扱うことの表れでもありました。
韓国で土葬が主流だった理由
儒教の影響と「孝」の考え方
韓国社会は儒教の影響を強く受けており、「孝(こう)」、つまり親や先祖を敬い大切にする精神が文化の根幹にあります。親から授かった身体を傷つけることは不孝にあたるという考え方から、遺体を火で焼くことへの強い抵抗感がありました。
先祖の霊を丁寧に扱い、子孫が代々守り続けることが「孝」の実践とされており、これが土葬文化を長く支えてきました。
風水と先祖供養の関係
韓国では風水(風水地理)の考え方が墓の選定に深く関わっていました。「名当(명당)」と呼ばれる良い気が流れる場所に先祖を葬ることで、子孫に繁栄がもたらされると信じられていました。山の斜面や自然の中の吉地を選んで墓を設けるのは、この風水思想に基づくものです。
火葬が敬遠されてきた歴史的背景
火葬は長らく「身体を傷つける行為」として忌避されてきました。仏教が盛んだった時代には火葬が行われた時期もありましたが、朝鮮時代に儒教が国の中心思想となってからは土葬が再び広まりました。この流れが、20世紀後半まで土葬を主流にし続けた背景です。
韓国のお墓はどのように変化してきたか
土葬から火葬への移行
韓国では2000年代以降、火葬率が急速に上昇しました。2000年時点では火葬率が約33%でしたが、現在は90%を超える水準に達しています。わずか20年余りで、長年続いた土葬文化が大きく転換したことになります。
※火葬率のデータは公表統計をもとにした概数です。最新の数値は韓国保健福祉部の公式発表をご確認ください。
納骨堂が増えた理由
火葬の普及に伴い、遺骨を収める納骨堂が韓国各地で急増しました。納骨堂が広まった主な理由は以下の通りです。
- 火葬後の遺骨の収納場所として需要が高まった
- 都市部を中心に管理しやすい埋葬形式が求められた
- 墓地の維持・管理の負担を軽減できる
- お参りのアクセスが良く、高齢者でも訪れやすい
土地不足や管理負担の問題
韓国は国土面積に対して人口密度が高く、土葬墓地の拡大が物理的に難しくなっていました。さらに、山間部に点在する伝統的な土葬墓地は管理が困難で、核家族化・少子化が進む中で維持できない家庭が増加しました。こうした現実的な問題が、火葬・納骨堂への移行を後押しした大きな要因です。
韓国の納骨堂とロッカー式のお墓
ロッカー式納骨堂の特徴
韓国の納骨堂で広く普及しているのがロッカー式(봉안함 형식)の納骨堂です。壁面に扉付きのスペースが縦横に並び、各区画に骨壷や遺影・遺品を納める形式です。
- 屋内施設のため天候に左右されずお参りできる
- 都市部のビル内・寺院内に設置されていることが多い
- 区画の使用料は一定期間ごとに契約する形式が一般的
- 冷暖房完備で清潔に管理されている施設が増えている
参拝スペースや遺影の飾り方
ロッカー式納骨堂の各区画には、遺影写真・骨壷・故人の愛用品・花などが飾られます。区画の前に小さなテーブルが設置されている場合もあり、そこにお供えを置いてお参りする形式が一般的です。施設によっては共用の礼拝スペースが設けられ、椅子に座ってゆっくりとお参りできます。
家族で訪れやすい現代的な墓の形
ロッカー式納骨堂は、高齢者・子ども連れ・遠方からの訪問者にも利用しやすいのが特徴です。山間部の土葬墓地のように険しい道を歩く必要がなく、都心のアクセスが良い場所に位置することが多いため、現代の韓国人の生活スタイルに合った供養の場として定着しつつあります。
韓国の樹木葬と自然葬

樹木葬が広がった背景
韓国では2000年代以降、樹木葬(수목장)をはじめとする自然葬が普及し始めました。墓地の不足・管理の負担・環境への配慮といった現実的な理由に加え、「自然に還りたい」という価値観の変化が樹木葬の普及を後押ししています。
都市部の若い世代を中心に、墓石を持たない埋葬形式への関心が高まっており、今後もさらに広がると見られています。
墓石を使わない埋葬方法
韓国の樹木葬では、火葬した遺骨(または遺骨を粉末にしたもの)を樹木の根元や山林に埋葬します。墓石は使わず、樹木そのものが墓標の役割を果たします。
| 自然葬の種類 | 方法 |
|---|---|
| 樹木葬 | 指定された木の根元に遺骨を埋葬する |
| 芝生葬 | 芝生の区画に遺骨を埋葬。プレートのみで表示 |
| 散骨 | 海洋・山林に遺骨を散布する |
法律改正による後押し
韓国では2000年に「葬事等に関する法律」が改正され、火葬の普及と自然葬の法的整備が進められました。国が樹木葬地を整備・奨励する方針を打ち出したことで、民間施設だけでなく公営の樹木葬地も増加しています。法律による後押しが、自然葬を選びやすい環境を整えました。
韓国の樹木葬・自然葬については、自然葬ドットネットの解説も参考になります。日本との比較を含めた詳しい情報が確認できます。
韓国のお墓参りと供養の習慣

秋夕に行う茶礼の意味
韓国最大の祝日のひとつ「秋夕(チュソク)」は、旧暦8月15日に行われる収穫祭です。日本のお盆に相当する行事とも言われ、この日は家族が集まって先祖の霊を祀る「茶礼(차례/チャレ)」を行います。
茶礼では、祭壇に食べ物を並べて先祖に感謝し、家族全員でお辞儀をして礼をするのが基本的な流れです。お墓参りもこの時期に行われ、墓前を掃除して草を刈り、飲食物を供えます。
お供えする食べ物や果物
茶礼やお墓参りでのお供えには、季節の食べ物や故人の好物が用意されます。
- ソンピョン(松の葉で蒸した餅):秋夕の定番お供え
- 梨・りんご・柿・ぶどうなど旬の果物
- チャプチェ・焼き魚・煮物などのおかず
- 清酒またはマッコリ
- 故人が好きだった食べ物
供えたものを家族で分け合う風習
韓国では、お供えした食べ物を儀式の後に家族全員で分けて食べる風習があります。これを「음복(ウンボク)」といい、先祖の恵みをいただくという意味が込められています。供え物を分け合うことで、先祖と生きている家族がともに食事をするという感覚を大切にする慣習です。
韓国の葬儀の流れ

3日葬の基本的な流れ
韓国の葬儀は伝統的に「3日葬(삼일장)」として行われます。亡くなった日を1日目と数え、3日目に告別式と埋葬(または火葬)を行うのが基本です。
| 日程 | 内容 |
|---|---|
| 1日目 | 臨終・遺体の処置・訃報の連絡・喪服の着用 |
| 2日目 | 弔問客の受け入れ(입관・納棺の儀式) |
| 3日目 | 告別式・出棺・火葬または埋葬 |
近年は病院に設けられた「장례식장(葬儀式場)」で葬儀を行うことが一般的です。遺族は式場内に設けられた部屋に滞在し、訪れる弔問客を3日間迎え続けます。
通夜・告別式にあたる儀式
韓国の葬儀で弔問客が訪れる場は「빈소(ビンソ)」と呼ばれ、日本の通夜に相当します。遺影と祭壇が設けられた部屋に遺族が常駐し、弔問客は献花または香をあげてお辞儀をして礼をします。遺族は喪服(검은 상복)を着用し、弔問客に対して礼を返します。
服装や香典にあたる賻儀の考え方
弔問客の服装は黒のスーツまたは地味な色の服が基本です。日本の香典にあたるものを「부의(賻儀/プウィ)」といい、白い封筒に入れて持参します。金額の目安は関係性によって異なりますが、日本と同様に奇数金額を避けないなど、文化的な違いもあります。
※韓国の葬儀作法は地域・家族の慣習によって異なります。韓国に縁のある方への弔問の際は、事前に確認するのが確実です。
韓国のお墓で知っておきたい特徴
御影石の墓石が使われること
韓国の現代的な墓地では、日本と同様に御影石(花崗岩)の墓石が広く使われています。ただし形状は異なり、韓国では横長の石板型や、シンプルな碑石型が多く見られます。伝統的な土饅頭型の墓と現代的な石碑型の墓が混在しているのが現在の韓国の墓地の姿です。
移葬が増えている背景
韓国では「이장(移葬)」、つまり先祖の遺骨を別の場所に移し替える行為が増えています。主な理由は以下の通りです。
- 管理が難しい山間部の土葬墓地から、アクセスの良い納骨堂へ移す
- 土地開発・道路建設などによる墓地の移転
- 子孫が海外在住・遠方在住のため維持できなくなった
- 風水的によりよい場所に移したいという信仰的な理由
少子化や核家族化の影響
韓国でも少子化・核家族化が急速に進んでいます。かつては大家族が一緒に先祖の墓を管理するのが一般的でしたが、現在は1〜2人の子どもが遠方で働き、故郷の墓の管理が困難になるケースが増えています。「管理できる墓の形」への転換が、納骨堂や自然葬普及のもうひとつの大きな理由となっています。
まとめ
韓国のお墓事情は伝統と現代化が共存している
韓国のお墓は、儒教・風水・先祖供養の伝統を背景に発展してきました。土饅頭型の土葬墓地は長年にわたって韓国の景観の一部でしたが、土地問題・核家族化・価値観の変化を経て、火葬・納骨堂・樹木葬という新しいかたちへと急速に移行しています。
一方で、秋夕の茶礼・お墓参りの習慣・先祖への感謝の気持ちは、形を変えながらも韓国社会の中に根付いています。伝統と現代化が共存しているのが、現在の韓国のお墓事情の姿です。
土葬から火葬・納骨堂・樹木葬への流れを理解する
| 時代 | 主流の埋葬形式 | 背景 |
|---|---|---|
| 〜1990年代 | 土葬(土饅頭型) | 儒教・風水・孝の思想 |
| 2000年代〜 | 火葬・納骨堂 | 土地不足・法改正・核家族化 |
| 2010年代〜現在 | 樹木葬・自然葬の普及 | 環境意識・簡素化志向・法整備 |
- 韓国の伝統的な墓は土饅頭型で、儒教・風水の影響を受けていた
- 現在の火葬率は90%超。わずか20年余りで大きく転換した
- ロッカー式納骨堂は都市部を中心に広く普及している
- 樹木葬・自然葬は法整備とともに拡大中
- 秋夕の茶礼など、先祖供養の慣習は現在も続いている
- 移葬の増加は少子化・核家族化の影響を反映している
日本と韓国では葬儀・供養の形式が異なりますが、先祖を大切にする気持ちは共通しています。弔事や供養に関する実務的な情報は、新じいの徒然なるままでも幅広く取り上げています。日本の葬儀マナー・お布施の相場・法要の準備など、あわせてご覧ください。

